滞在型のスローツーリズムで見えてくる
能登の里山里海に隠れた
宝もの
日本海に突き出た能登半島の北半分にあたる奥能登。起伏に富む大地の多くは原生林に覆われ、荒波が寄せる外浦といつも穏やかな内浦という対照的なふたつの海に面することから、実に多彩な表情を持っています。輪島塗、いしる、キリコ祭り……。類まれな風土は、食に、住まいに、風習に、特異な個性をもたらし、今なお受け継がれています。
Slow-10
奥能登に、
ワインあり
奥能登のテロワールを
味わう。
穴水町で2006年に醸造がスタートした「能登ワイン」は、知る人ぞ知るワイナリー。生産量が少なく、ほとんどが石川県内で消費されているため他県で見かける機会はなかなかありませんが、ワイン通の間で静かに人気を高めています。代表的なのが、山ブドウとカベルネ・ソーヴィニヨンを交配させた日本固有のブドウ、ヤマソーヴィニヨンを使った飲みごたえのある赤ワイン。新潟生まれの品種、マスカット・ベリーAを使った赤ワインも和食に合うと評判です。また、シャルドネから造った辛口の白ワインも人気を高めています。「能登ワイン」では、醸造所を見学し、約8種類のワインの飲み比べができます。
ブドウ農園の運営を柱に地域づくりに取り組む「株式会社高田」は、能登では特に栽培がむずかしいと考えられていたシャルドネを中心に栽培管理し、「能登ワイン」にも多くの醸造用ブドウを収めています。代表の村山智一さんは、約20年にわたる試行錯誤の中で、奥能登のテロワール(土壌・地勢・気候などブドウ生育の要素)は醸造用ブドウの栽培に向いていると考えるようになったと話します。 「ブドウ栽培には湿度が高いとされますが、東からほどよい海風が吹くので、緩やかな丘陵地に広がる圃場には案外湿気がこもりません。昼夜の寒暖差、四季がはっきりしていて年間を通じた寒暖差も、ブドウの味を力強くしているんじゃないかな。できるワインは里山里海の恵みが凝縮されたしっかりした味わい。能登の食べ物によく合うと思いますよ」。 なるほど、百聞は一杯にしかず。さあ、奥能登のテロワールを舌と鼻で感じてみましょう。物語を紡ぐ人~スロツーびと~
株式会社高田 代表:村山智一さん