滞在型のスローツーリズムで見えてくる
能登の里山里海に隠れた
宝もの
日本海に突き出た能登半島の北半分にあたる奥能登。起伏に富む大地の多くは原生林に覆われ、荒波が寄せる外浦といつも穏やかな内浦という対照的なふたつの海に面することから、実に多彩な表情を持っています。輪島塗、いしる、キリコ祭り……。類まれな風土は、食に、住まいに、風習に、特異な個性をもたらし、今なお受け継がれています。
Slow-2
サイクリングは小さな冒険
サイクリングだから得られる新たな発見と出会い。
『春蘭の里』の空気をもっと感じてみたい。レンタサイクルで出かけることにしました。案内してくれたのは多田真由美さん。多田喜一郎さんの長女で、『春蘭の里』代表理事も務めています。廃校になった小学校が宿泊交流施設にリノベーションされた『こぶし』で電動アシスト付き自転車を借りて出発します。
サイクリングをしながらいろんな話をしました。真由美さんの時代にはすでに近くの小中学校は廃校になってしまっていて、少し離れた学校へ1日往復1便のスクールバスで通っていたそうです。高校卒業後、観光を学ぶために金沢の短大へ進学した真由美さんは、いかに地元のことを知らなかったかを実感したといいます。短大卒業後、『春蘭の里』の魅力を発信したいと、代表理事の仕事を引き受けました。
「あそこに草に覆われた石橋が見えますよね。クルマでの移動ばかりだったから、私、大人になるまでその存在すら知らなかったんです。今でもいろんな発見があるんですよ」
みんなで力を合わせて守る
地域の伝統行事。
浄土真宗の信仰が厚い能登では、日常生活でさまざまな仏事が大切に守られています。宗祖(開祖)である親鸞の命日に開かれる報恩講は1年で最も重要な行事の一つ。おりしも、『長龍寺』では報恩講に向けた大掃除が行われていました。本堂ではハシゴを架けて、高い梁の裏側まできれいにしています。一角には、煌びやかな真鍮製の仏具を丁寧に磨く姿も。「もう40年以上これをやっているんですよ」とご高齢の参加者。みんなが心穏やかに作業する様子から、地域の中でお寺がいかに大切にされているかが伝わってきます。
物語を紡ぐ人~スロツーびと~
春蘭の⾥ 代表理事:多⽥真由美さん
こんなところに世界的名店が? 地域素材で作る珠玉のジェラート。
「めちゃくちゃ美味しいジェラートのお店があるんです。そこまで足を伸ばしてみませんか?」と真由美さん。ついていくと、田園の中にかわいい三角屋根の『マルガージェラート能登本店』が現れました。ここは、ジェラートの国際コンクールでたびたび入賞を果たしているジェラテリア・柴野大造さんのお店。野々市市などにも店舗を構え、世界を舞台に活躍している柴野さんが、地元の創業店として大切にしているお店です。
「この時期のおすすめは、新米フレーバーですよ」と真由美さん。地元の生乳とコシヒカリを使った新米ジェラートは、なんとも繊細でやさしい味わい。ドライブやツーリングの人気立ち寄りスポットになっているのも、納得の美味しさです。
※能登の食材のみでつくった「マルガーの能登ジェラート」は、『世界農業遺産 未来につなげる「能登の一品」』に認定されています。