滞在型のスローツーリズムで見えてくる

本当の豊かさにふれる場所

能登半島の突端に位置する珠洲市。その北側にあたる大谷地区は、変化に富んだ海岸線が続く風光明媚なところ。海から昇る朝日と海に沈む夕日を眺めることができる、めずらしい場所でもあります。ここでは、地元民と県外の人の交流が盛んに行われるようになっています。

トップ本当の豊かさにふれる場所滞在記 Slow-3

Slow-3

耕し、食べて、 地域に根差す。

現代集落が管理する棚田。オンラインサロンのメンバーで田植えを行った。

夏場は草刈りを2週間しないとこのとおり。足を踏み入れることもできないほど、雑草がはびこってしまう

棚田がある高台に造った展望デッキ。グミとエノキのサンシェードの下に海を眺められるベンチは、ビール片手に夕日を眺めるのに最高

耕作放棄地を減らしたい。

オンラインサロンでのディスカッションなどで、半年をかけて現代集落のビジョンを固めてきた。
部屋の各所にあるマインドマップから、その思考プロセスがかいま見える。

棚田を見せてもらいました。林さんは耕作放棄地となっていた田んぼに、昨年からコシヒカリを植えています。黄金色になりつつある稲が、海から吹き抜ける風に揺れています。
「真浦に1年半住んで、いちばん必要だと思ったのは、草刈りロボットですよ。この草ボーボーの土地、実は田んぼと田んぼの間の通路なんですが、つい2週間前にきれいに草刈りしたばっかりなんですから、雑草の勢いは凄まじいです」と林さんは笑います。
貴重な平地を利用して作られた田畑は、ひとたび耕作放棄地となって人の手が入らなくなると、あっという間に雑草がはびこる荒地となり、隣接する田畑を侵食していきます。現在、真浦集落は高齢化が進んで空き家が増え、40棟に対し住民は30世帯ほど。平均年齢は80歳近いのではないかと林さんは話します。
「これだけ空き家があるのに、集落が荒んだ印象になっていませんよね。むしろ明るく美しい景観を保っています。それも、住民の皆さんの日々の野良仕事の賜物なんです。でも、高齢化が進む一方の今の状況では、手が回らなくなるのは時間の問題。この耕作放棄地と空き家の問題もDXで解決の道を探っていきたい」

納屋に隣接する菜園で、レモングラスを収穫。

トマトやナスも食べ頃を迎えた。無農薬・有機栽培だから、
形は不揃いで収量もよくはないが、味はピカイチ。

レモングラスは一晩干してお茶に。100%自家製のレモングラスのハーブティの香り高さに驚く。

左/収穫物は保存できるものは地元の人に最適な保存方法を聞いて備蓄する。右/本棚には食材や調理、自然暮らしに関する本が増えていく。

地域での活動がどのように循環するかを視覚化した「システムループ」の図。地域に実際に入り込むことで初めて見えてくるものは多い。

地域を見守る神社。季節の祭礼を行い、神社を管理するにも住民の多大な労力が必要。

集落周辺の散歩は発見の連続。草木や生き物の息吹を感じながらリフレッシュできる。

物語を紡ぐ人~スロツーびと~

「珠洲の魅力ですか?いちばんは人“人がいい。それに尽きますね」

現代集落・主宰:林 俊伍さん