滞在型のスローツーリズムで見えてくる
里山の営みにとけこみ旅する
能登半島のちょうど真ん中あたり。志賀町熊野地区には、田園と山林が織りなす日本の原風景が広がります。近頃は“のとくまの”という愛称で呼ばれている地域です。かつては薬草の名産地として知られ、地域ぐるみで薬草づくりに取り組み、栄えました。今なお自然と調和しながら営まれる里山の暮らしにとけこんで、ゆったりと過ごすことができます。
Slow-3
森を守る人
ナタやノコギリなどの道具を装着して、いざ森へ。
林業の道を志し
お父さんの故郷へ。

起伏の激しい丘陵地にスギやヒノキが植林されている。
休耕地は何もしないと荒れ放題になってしまうが、しっかり草刈りすると、数年後に山菜が芽を出してくれるとか。ウドもこんなに元気だ。
伐採後に苗木を植林した斜面。手間ひまかけて木を育てていく。
のとくまのの田畑に潤いをもたらしてくれる日用川。その上流地区に、大瀧俊定さんを訪ねました。大瀧さんはお父さんの故郷である志賀町に中学3年生の時に移住してきました。おじいさんが所有し管理してきたスギやヒノキ、アテと呼ばれる能登ヒバが生い茂る山で過ごすためです。高校3年まで、毎週日曜日と祝日、夏休みと春休みはほとんどすべて、お父さんと一緒に山林を歩き回って過ごし、林業の基礎を身につけました。お父さんの病気をきっかけに40代半ばで志賀町に戻り、林業を継ぎました。
森林での作業に同行させてもらうと、大瀧さんは木が伐採された斜面に連れて行ってくれました。
「苗木があるのが見えますか? この斜面はちょうど先日、植林を終えたところです。野菜と同じように、木も育ててから伐採して出荷し、また次の苗木を植えなければいけません。ところが、日本の多くの山では、安い外国産材に押されて林業が成り立たなくなり、山の手入れをしなくなり、何百年も続いていた森林サイクルがストップしてしまいました。手入れをしていない山ばかりになってしまい、CO2を吸収するどころか、逆に吐き出している状態です。木の需要もないので、そのまま放置されたままなんです」と大瀧さんは話します。木がたくさんあって緑が豊かでいいとか、はたまた、木がなくなっていいというわけではありません。山を見て、そんなふうに単純に考えてはいけないのです。
大瀧さんの相棒のはなちゃん。最初は吠えていたけれど、いつの間にか打ち解けてくれた。
数十年先を見据えた
今の仕事。

大瀧さんのおじいさんが山から伐り出した材木をふんだんに使って建てた自宅。頑丈そのもの。
「理想的なスギ材は、年輪がきれいな同心円に連なる直径80cmクラスです。この斜面に約3000本の苗木を植えましたが、理想の木は何本できると思いますか? ……2、3本です」
まず1年以内に野ウサギに芽を食べられて半数の苗木がダメになります。苗木が成長の早い雑草に埋もれてしまわないように、年数回の下草刈りが不可欠です。大きくなっていく過程で、よく育ちそうな木を残して他を伐採する間伐を行っていきます。1本の木を中心として半径10m以内に他の木がない状態を目指します。ある程度大きく育ったら伐採して出荷できますが、それまでに35年〜50年もの年月を要します。ヒノキやアテの場合は、もっと時間がかかるというから気が遠くなります。
水を浄化し蓄える
森の大切な機能。

伐採した木を運ぶには重機を通すための林道が必要。
将来的には、林道を造らなくてもドローンで木を搬出できるようになるかもしれない。
森では、間伐だけでなく、余分な枝を落とす枝打ちを行うことで木の成長を促し、地面まで日光が届く明るい森にすることも大切です。まんべんなく日光を受けて育った木は、まっすぐ丈夫で、しっかりと根を張ります。そうすると、森が雨水や雪解け水をゆっくりと吸収し、水が土壌にしみ込む過程で浄化しつつ、ミネラル豊富な水にします。大雨の際には急激な河川の増水を緩和し、洪水を抑制します。これは水源涵養機能と言われる森の大切な役割です。自然災害が頻発する現代の日本では、早急に山を整備し、山林に水源涵養機能を持たせられるかが大きなカギとなっています。山に保水力を持たせることで水害を防ぎ、木の根が土砂の流出や土砂崩れを抑えてくれるからです。また、水資源を確保するためにも重要な課題です。
「ドローンを利用した画像解析によって、山の調査が簡単かつ正確にできるようになっています。今後は、伐った材の搬出用の林道をわざわざ作らなくても、ドローンで運べるようになると期待されています」
大瀧さんは、今日もひとり、森を守る作業に打ち込みながら、林業の明るい未来に想いを馳せました。
物語を紡ぐ人~スロツーびと~
「水を守るためには、森に手を入れなければいけない。大変だけど、やりがいのある仕事」
大瀧林業・大瀧俊定さん
山あいだけど
魚もバツグン。

『とよ島』は毎日厳選した能登の魚介を使う。
能登半島の魅力は、里山里海の恵みにあふれているところ。かつて能登半島の内陸部の暮らしは海とはあまり縁のないものでしたが、道路事情や流通がよくなった今では、海辺と同じように新鮮な魚を味わえます。
『とよ島』は魚料理が自慢のお食事処。昼も夜も地元民でにぎわっています。農業体験でお腹はペコペコ。ランチに行きました。
この日の刺身定食は、金目鯛、アジ、バイ貝、ブリ、真鯛、赤イカ、甘エビと、なんともうれしいラインナップ。切り身は角がピンッと立っていて鮮度抜群。ブリカマ唐揚げ定食は、大きなカマがふたつも登場する驚きのボリューム。味の方も、夢中でたいらげてしまうおいしさです。カウンターのネタケースには、巨大なカキや甘鯛などがズラリ。麻婆豆腐やヒレカツも人気だとか。また寄らせてもらわなきゃ。
人気の刺身定食は、新鮮な魚介がたっぷり盛り込まれる。
ノリがよくて腕も立つ名物マスター。