滞在型のスローツーリズムで見えてくる

神代から伝わる
織物とお酒の物語

能登半島のほぼ中央に位置する中能登町。加賀百万石の祖・前田利家が能登の支配を固める舞台となった石動山、4~5世紀に造られた36基の古墳からなる雨の宮古墳群など、見どころの多いエリアです。伝統的な最上級の麻織物である能登上布や昔ながらのにごり酒・どぶろくが受け継がれ、神事が今も大切に守られています。中能登の魅力に触れていきます。

トップ神代から伝わる織物とお酒の物語滞在記 Slow-2

Slow-2

神が造る酒

中能登町には、どぶろくを造る神社が3社ある。

重厚な注連縄が飾られた「天日陰比咩神社」の鳥居をくぐり、本殿へ。

豊穣のお酒、
どぶろく、とろり。

どぶろくの製造が許可されている「天日陰比咩神社」。
樹齢600年を超える「いろは楓」や「逆立ち狛犬」など見どころも豊富。

古くから山岳信仰の地として崇められていた石動山(せきどうざん)のふもとに、「天日陰比咩神社(あめひかげひめじんじゃ)」はあります。その歴史はなんと2000年以上。鎌倉時代に能登國一ノ宮大社に次ぐ名社として能登國二ノ宮に指定され、広く能登の人々の崇敬を集めてきました。この由緒正しい神社のユニークなのが、どぶろくを造っているところ。どぶろくとは、米と水、麹を合わせて発酵させたもので、一般的な日本酒のように濾したり搾ったりしない昔ながらのお酒です。どぶろくの製造は法律で禁じられていますが、中能登町は2014年に内閣総理大臣から「どぶろく特区」の認定を受け、農家民宿や農家レストラン、神社などでどぶろくの製造が可能になりました。

ご祈祷を受けたあと、お供え用のどぶろくのお下がりをいただく。
米の粒がわずかに残っていて、とろとろの状態。
口あたりは軽くフルーティで、米の旨味もしっかり感じられる。

参道の横にある小屋が、どぶろくを造る工房。

中能登町は、どぶろくの町。

石川県でどぶろく造りが認められている神社4社うち、「天日陰比咩神社」「能登部神社」「能登比咩神社」の3社が実は中能登町にあります。同神社の宮司の下の神職、禰宜を務める船木清崇さんは、中能登は“どぶろくの町”だと話します。
「どぶろくを造る神社は全国でも30社のみ。その1割がこの小さな町にあるのですから、かなりの密度ですよね。神社が醸造するどぶろくは神事のお供え用なので、新嘗祭や新年の祈祷などの際のお下がりとして授けられるもので、普段振る舞うことはできません。道の駅などで購入できる商品もありますので、ぜひそちらをご賞味ください」。
とろりとしたどぶろくは一見強そうですが、意外に飲みやすく女性にも人気。美容にもいいのだとか。自然のチカラだけでゆったりと醸されたお酒をゆるりと味わってみましょう。

どぶろくを醸造する小屋「みくりや」。11月初旬から仕込み、2週間から1カ月醸してどぶろくを造る。

中能登町で自然栽培された酒米・五百万石などを使って酵母の酛を作り、水と合わせて発酵させる。

時々かき混ぜて発酵を促す。表面にふつふつと炭酸ガスが発生しているのは、酵母が元気に働いている証拠。
完成したどぶろくは、ピチピチとフレッシュな口あたりで米の甘みも豊か。

社殿の前に対になってそびえる杉の御神木。荘厳な空気が漂う。

神社の敷地内を流れる水も冷たく清らか。石動山にしみ込みゆっくりと磨かれた水だ。

物語を紡ぐ人~スロツーびと~

うちのどぶろくは、あくまで神事のお供え用です」

天日陰比咩神社 禰宜:船木清崇さん

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