極上のなまこから手作りする
希少な高級珍味

商品名:なまこやのくちこ このわた
メーカー:有限会社大根音松商店 なまこや

右から「干くちこ」「このわた(竹筒)」「このわた(瓶詰)」。

七尾湾が育む極上のなまこ

好きな人にはたまらない海の幸、ナマコ。七尾湾で獲れるナマコは、ひときわ味が良い一級品です。その秘密は“天然のいけす”とも呼ばれる七尾湾の特殊な環境にあります。内海の七尾湾はいつも穏やか。そこに大小40本もの川が流れ込んでいます。七尾湾は遠浅であるため、海底まで日光が届きます。奥能登の原生林に降った雨や雪解け水は栄養たっぷり含んで七尾湾へと注がれます。光合成に必要な日光、そして栄養、適度な水温という好条件の海で植物プランクトンがたくさん発生し、それをエサとするナマコが元気に育つというわけです。
ナマコは身の部分も美味しいですが、腸の塩漬けである「このわた」、卵巣の塩漬けである「くちこ」も絶品です。これらの能登のナマコの珍味は、およそ1300年前には、すでに奈良の都へ届けられていたことが記録されており、江戸時代には加賀藩から将軍家へ献上されていたといいます。七尾市に1948年に創業した「有限会社大根音松商店」は、古くから伝承された製法をそのままに、「このわた」や「くちこ」を手作りしています。

「このわた」は絶好の酒の肴として知られるが、熱々のごはんのおともとしても最高。

海中の泥や砂を食べて植物プランクトンを摂取しているナマコは、漁獲後、海に設置されたハンモックのような網の中で2〜3日を過ごし、腸の中をきれいにする。

手前から黒ナマコ、赤ナマコ、青ナマコ。黒ナマコと青ナマコは底引網で漁獲し、ナマコ全体の7〜8割を占める。赤ナマコは岩場で箱メガネを使って探しながら1匹ずつ獲り、全体の2〜3割と希少。赤ナマコは身がコリコリと食感がよく、このわたやくちこはねっとり濃厚と珍重される。

ナマコの加工はスピードが命。素早く捌いて内臓を取り出す。

「このわた」と「くちこ」の加工は何一つ機械化できる工程がなく、すべてが手作業。手早く正確に作業できるようになるには、10年くらいはかかるという。

「有限会社大根音松商店」専務取締役の園山芳生さん。「私は、このわたには白いごはん。もう信じられないくらい旨いです」。

すべてが熟練の職人による手作業

1匹のナマコからごく少量しか採れない腸を、伝統の技で塩漬けにしたものが「このわた」です。七尾湾で獲ったナマコを海中で2〜3日飼育し、泥を吐かせます。さらに工場の水槽で管理したあと、1匹1匹、内臓を傷つけないように捌きます。取り出した内臓は、腸、その腸の周りにある二番わた、卵巣に選別し、それぞれ1本1本選別して水洗いします。熟練の職人が指先でチェックしながら、わずかに残った砂も丁寧に取り除いていくという大変な手間のかかる作業です。そのようにして下処理した腸に能登のうす塩を加えて一昼夜寝かせることで、ようやく「このわた」が完成します。

「くちこ」は軽く炙ると、より風味が豊かに。噛み締めるほどに広がる奥行きのある旨みと上品な磯の香り。
日本酒との相性間違いなし。刻んでピザにトッピングするのもオツだ。

「くちこ」を1本1本、素手の感覚を頼りに丁寧に手作業で下処理していく。極寒の時期だが、くちこが傷まないように、暖房なし部屋で、冷たい水で洗う。あかぎれができそうな作業なのに、手は驚くほどツルツルスベスベ。ナマコにたっぷり含まれるコラーゲンや保湿成分セラミドのおかげなのだとか。

麻縄に「くちこ」を干していく。長いものを真ん中に、短いものを外側に並べていくことできれいな三角形に。下の頂点から水分が落ちやすくする意味もある。三味線のバチに似ていることから干くちこは「バチコ」の別名でも呼ばれる。

2月にだけ作られる、絶品の干くちこ

ナマコは1月から2月の限られた時期だけ卵巣を持つようになります。その卵巣は口先にあることが「くちこ」という名の由来です。ナマコは雌雄同体なので、捌いてみないと、くちこを持っているかどうかはわかりません。くちこを持つナマコは10匹に1匹と程度と希少で、ウニ(塩ウニ)、カラスミと並んで日本三大珍味の一つに数えられています。
くちことこのわたは風味が似ていますが、くちこの方が旨みに雑味がなく、より上品な印象です。このわたのように塩漬けでもとても美味しいですが、それを板状に干して乾燥させた「干くちこ」は絶品。軽く炙っていただくと、なんとも言えない心地よい潮の香りと濃厚な旨みを堪能できます。干くちこを一枚作るには何十匹分ものナマコが必要で、くちこを持つナマコは10匹に1匹だけというから、捌くナマコの数はもう途方もありません。作ることができるのも、ナマコがしっかりしたくちこを持つ2月の1カ月間のみ。希少な食材を使って手間ひまかけて愛情いっぱいに作られる、これぞまさに珍味の名にふさわしい逸品です。

「このわた」と「くちこ」作りに携わって35年という穂苅正子さん。グルメ漫画の決定版『美味しんぼ』43巻にも実名で描かれている。