米と大麦だけをじっくりコトコト
昔ながらのやさしい甘さ

商品名:松波米飴 じろ飴
メーカー:横井商店

「松波米飴」の水飴タイプ「じろ飴」。米と麦芽だけをじっくり煮詰めてつくった一品。

500年の歴史があると言われる松波の米飴

「じろ飴」とは、能登や金沢などでつくられている水飴のこと。米と大麦、水だけを使ってつくる昔ながらの米飴で、水分を残して仕上げたものは、とろっとした状態を意味する方言「じゅろい」から、そう呼ばれるようになったと言われています。能登町の松波地区にある横井商店は、500年の歴史があると言われる松波の米飴の伝統を守る店。店主の横井千四吉さんまで4代にわたって受け継がれています。
横井商店の「じろ飴」をひと匙いただきます。穏やかな甘みが口に広がり、ほのかな香ばしさが鼻から抜けます。しっかりと甘いのに、クセはなくさっぱりとした後味。デザートにかけるのもいいし、料理に砂糖の代わりに使うのもよさそうです。

ほどよい粘りととろみに仕上げられた「松波米飴 じろ飴」。

松波漁港近くに横井商店はたたずむ。

店舗裏の作業場で飴づくりに取り組む横井千四吉さん。
横井商店を受け継いで30年以上になる。

米飴づくりには大変な手間と時間がかかります。横井商店で使うのは地元能登産の米と石川県産の大麦のみ。まず米を洗い、じっくりと水を吸わせます。米を蒸し、そこに石臼で挽いた大麦の芽とお湯を混ぜ合わせて1晩寝かし、発酵させます。発酵の力によって米のデンプンを糖化させ、甘み成分を引き出すのです。翌朝、麻袋で汁を搾り、大きな釜に入れてゆっくりと煮詰めていきます。横井さんはしゃもじでかき混ぜながら、時折しゃもじから落ちる煮汁のとろみを確認し、水の中に数滴垂らして様子をチェックします。
「発酵の具合、煮詰まり方、固まり方は気温と湿度に影響されるので、季節やその日の天候によってかなり左右されますね。同じようにやっていては、いつも同じ仕上がりにならないので、常に状態を見極めながら微調整し続ける必要があります」

米を蒸して発酵させたあと、汁を分離して巨大な釜で煮詰めていく。

逐一飴の状態を確認しながら、じっくりと煮詰めていく。じろ飴になるまで3時間以上、固い米飴にするには5時間もかかる。

横井商店では、固い米飴も各種用意。珠州の塩やいしり、地元産の果物を使ったものなどバラエティ豊か。

能登の発酵文化が生んだ生活の知恵

能登は、日本酒をはじめ、魚醤の一種「いしる」、なれずしなどの発酵文化が豊かなところ。イカ漁港である小木港がある能登町は、イカを発酵させた醤油「いしり」が暮らしの必需品となっています。米飴もそんな伝統的な発酵文化を今に伝える暮らしの知恵と言えます。
「かつて米飴づくりは、梅雨の後に劣化した米を上手に活用するための技術でもあったようで、味噌づくりのように各農家で行われていたようです。次第にうちのように米飴づくりをまとめて引き受ける家が現れたとか。砂糖が高価な時代には、甘みを得られる貴重な方法でした。砂糖が手頃になると共に廃れていきましたが、私の母のヨシコは生涯、地道に米飴をつくり続けていましたね。私も他の仕事をしていましたが、40歳を超えてから、この火は消してはいけないと、引き継ぐことを決めました」横井家では、誰かが風邪をひくと、ヨシコばあちゃんが「大根飴」をつくってくれたそうです。銀杏切りにした大根にじろ飴を加えて一晩置くと、じろ飴に大根の水分が加わったシロップができます。それをそのまま飲んでもいいし、お湯で割っても美味しいとのこと。喉の痛みを和らげてくれるといいます。
また、じろ飴は砂糖やみりんの代わりに使うと風味がひときわよくなるそうで、照り焼きや玉子焼き、ブリ大根などに使うとぐっと上品で味わい深くなるようです。伝統のやさしい甘みを思い思いに味わってみましょう。