釣り上げ直後に船上で急速冷凍
鮮度と旨味を閉じ込めたするめいか

商品名:小木の船凍するめいか
メーカー:石川県漁業協同組合小木支所

1尾ずつ冷凍されたイカが2尾ずつ袋詰めされた使い勝手のよいパック。

知る人ぞ知るイカの名産地

函館や八戸と並び日本の三大イカ漁港に数えられているのが、能登町の小木港。小木は知る人ぞ知る「イカの町」です。小木は函館や八戸ほどの知名度はないものの、小木港に揚がるスルメイカは、全国的にもめずらしい「船凍するめいか」としてブランドになっています。“船凍”とは船で凍結すること。釣り上げたスルメイカを即座に急速冷凍し、鮮度を閉じ込めた状態で持ち帰ってきます。なかでも、1尾ずつ丁寧に冷凍したものは、生イカよりも美味しいイカを家庭で気軽に味わえると人気を高めています。

イカは透き通った白色から釣り上げ直後に褐色になり、鮮度が落ちると乳白色に変化する。「船凍するめいか」が褐色なのは、鮮度がそのままに保存されている証拠。

200tクラスの漁船で、最長50日間帰港せずに漁を行う。

イカを凍結できる船は全国に約40隻しかないそうですが、そのうちの11隻が小木港に所属しています。石川県漁業協同組合小木支所の坂東博一さんは、小木港のイカ釣り船で船凍が発展した背景をひもときます。
「明治までは小木港はタラ漁が盛んでした。タラの延縄漁のエサに使うためにイカを獲っていたのが、次第にイカ漁にシフトするようになり、北海道で獲ったイカを現地の港に揚げるようになりました。冷蔵技術が発達すると小木港にも持ち帰ってこられるようになったものの、平地が少ない能登町では陸で凍結したり加工したりする場がなかったために、依然として多くがよそへ水揚げされていました。昭和40年代後半に冷凍設備を搭載した冷凍船が開発されると、小木の漁師たちはこぞって冷凍船を導入して、地元小木港にイカを持ち帰るようになっていったのです」

1尾ずつ凍結するために開発された波形トレイ。(並んでいるのは標本)

「生イカよりも旨味がのって美味しいです」と石川県漁業協同組合小木支所の販売冷凍課山本主任さん。

ニーズに応えて1尾凍結の技術を
いち早く開発

船凍が始まった当初は、釣り上げたイカを8kgずつ板状に凍結するだけでした。それが、昭和50年代半ばに、1尾ずつの凍結も行うようになりました。
「取引先の生活クラブからの要請がきっかけです。生活クラブは共同購入して各家庭に割り振る仕組みを基本としていますが、板状に凍った大量のイカを分けるのは大変です。そのため、そもそも1尾ずつ冷凍してもらえないかという相談があったそうです。その要望に応えて開発されたのが、イカ同士を密着させずに凍結する波形トレイです。このトレイに並べることで、イカを丸ごと1尾キレイに冷凍することができるようになったのです」

石川県漁業協同組合小木支所の坂東参次代理兼業務部長もかつては船に乗ってイカ釣り漁を行っていた。「やっぱり大漁はうれしいですね。早く冷凍庫がいっぱいになって帰れますから」

船内から。夜の間にイカ釣りを行い、順次急速冷凍していく。
凍結するまでに睡眠をとり、急速冷凍庫から通常の冷凍庫へ移送、釣りの準備。
夜にまた釣りを開始するというサイクル。

「船凍するめいか」の美味しい食べ方を聞きました。解凍のコツは、食べたい時間の8時間前に冷凍庫から冷蔵庫へ移しておくこと。まだ少し凍っていてシャリッとした状態で調理すると、刺身や輪切りにするのにも作業がラクできれいに仕上がります。
まずおすすめは刺身。生イカよりもねっとりと甘くなっていて、イカの風味を堪能できます。抜いたワタにゲソや野菜を混ぜて身に戻してから焼く「鉄砲焼き」も小木で人気の食べ方。ゲソと野菜を身に詰めて酢漬けにする「酢イカ」は、伝統的なハレの日の料理として親しまれているそうです。
イカを丸ごとサッと湯がいて輪切りにしただけの「茹で刺身」も、手っ取り早く味わえると人気です。漁師たちが大量に獲れた時にやるのが「塩イカ」。丸のままのイカに粗塩をして一晩寝かしたもので、余分な水分が抜けて、焼いても煮てもまた一味違って美味しいそうです。調理法によってさまざまに表情を変えるイカ。「船凍するめいか」はイカ本来の魅力を味わうのにうってつけなのです。

部屋が丸ごとマイナス30度以下に冷やされている急速冷凍庫。

北海道から九州までイカを追いかけて漁を行っている