滞在型のスローツーリズムで見えてくる

豊饒の海ひろがる
原風景の里

七尾市街から車で20分ほどの富山県との県境に位置し、富山湾に面する七尾市大呑地区。条件がよければ、対岸に標高3000m級の立山連峰を望むことができます。海岸から山までの1kmあまりの平地に広がる田んぼ。緑に覆われた山には、アユが遡上する熊淵川が流れています。何十年も変わらぬ風景を残す里山里海があります。

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Slow-3

ナゾの名物、巻鰤

ブリで作る海の生ハム。

七尾市大呑地区にある住宅の軒先には、藁でできた奇妙な細長いものを見つけることができるかもしれません。伝統的な保存食「巻鰤」です。
大呑地区が面する富山湾は、海底が急激に深くなっているので湾全体が天然ブリを誘い込む定置網のようになっています。11月から1月にかけては脂ののった寒ブリが水揚げされます。大正時代、金沢に赴いた大呑の住民が巻鰤を知り、自家製するようになったそうです。以来、10kg以上の寒ブリが獲れる時期には各家庭で巻鰤が作られてきました。塩漬けに半月、陰干しに半月、熟成に半年かかり、7月から8月頃にようやく食べ頃を迎えます。『おおのみビレッジ』の池岡直樹さんも代々継承されてきた製法で巻鰤を作り続けているひとり。「お盆に親戚が大勢集まった時、名産の魚でもてなしたいけれど、夏場にいい魚は揚がりません。そこで、ちょうど食べ頃になった巻鰤を振る舞って、夏場でも旨いブリを堪能していただく。しっとりとして深い味わいはまるでハムのようで、海の生ハムとも言われているんですよ」と池岡さんは話します。
薄くスライスして白いごはんにのせたり、お茶漬けにするとたまらないとか。
海の生ハム……想像するだけで美味しそう。

13kgものブリの半身を塩漬けにして半月間陰干しに。巻鰤はこのさらに半分を荒縄で巻いて1本分を作る。

『おおのみビレッジ』の巻鰤体験に参加しました。塩漬けし陰干ししたブリの4分の1本分をセロハンと新聞紙、稲藁で包み、荒縄できつく巻いていく。
最後は荒縄の先を一旦ほどいて2本の縄にない直し、しっかりと結んで完成。6カ月間軒下に吊るして水分を落としながら熟成させると食べ頃になる。

巻鰤に不要な部位は切り落として、囲炉裏で網焼きに。すでに1カ月熟成されているから、この時点で絶品。ごはんがほしい。お酒も

初めての挑戦でもなんとか形になった。また食べ頃の時期に味見しに来ないと

物語を紡ぐ人~スロツーびと~

「大呑はほとんど知られていない。でも一度滞在した人はリピートしてくれる。
他にはない、素朴な魅力があるようです」

おおのみビレッジ:池岡直樹さん

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