滞在型のスローツーリズムで見えてくる
豊饒の海ひろがる
原風景の里
七尾市街から車で20分ほどの富山県との県境に位置し、富山湾に面する七尾市大呑地区。条件がよければ、対岸に標高3000m級の立山連峰を望むことができます。海岸から山までの1kmあまりの平地に広がる田んぼ。緑に覆われた山には、アユが遡上する熊淵川が流れています。何十年も変わらぬ風景を残す里山里海があります。
Slow-2
絶景山荘、 ぽつねんと
2020年に別荘として個人利用されていた山荘を全面リノベーションしてオープンした1棟貸しの宿
『おおのみビレッジ 遊心庵』。
『おおのみビレッジ 遊心庵』のウッドデッキからの眺め。目の前に広がる田んぼと青い富山湾。
この日は見えなかったが、条件がよければ雲の下あたりに立山連峰が見えるという。
小上がりのソファのエリア、石造りの床とテーブルとチェアのエリア、和室風のベッドのエリアがワンフロアに。
スタイリッシュさと機能性が見事に融合した空間。
セミダブルベッド3台と敷布団3組を備え、最大6名の宿泊が可能。簡易キッチンもあり、暮らすように滞在できる。
里山里海の原風景に
抱かれながら過ごす。

リビングルームのチェアから富山湾の水平線が。
七尾市大呑地区は深い森に覆われた丘陵地に挟まれた、清流・熊淵川の流域に広がるエリアです。与作隊のみなさんのように農林漁業に従事する人が多く暮らしてきましたが、住民の高齢化と人口流出によって、空き家と耕作放棄地が増えてきました。これまでのような田畑と森が織りなす美しい景観を守りたいと活動しているのが、南大吞郵便局を中心とする集落をベースにした『おおのみビレッジ』です。観光客や移住希望者に向けて、地域の暮らしを体験できるさまざまなプログラムを提供しています。
山荘をリノベーションした1棟貸しの宿『おおのみビレッジ 遊心庵』は、国内のみならず海外からのゲストにも人気急上昇の宿泊施設。里山里海の原風景に抱かれながら、誰にもじゃまされない贅沢な時間を過ごすことができます。

釜風のガス炊飯器では、簡単に美味しいごはんを炊くことができる。

『おおのみビレッジ 遊心庵』にはWi-Fiはあるが、あえてテレビは置いていない。読書に耽るのもいい。

集落最奥にある阿良加志比古神社までは宿から約30分の散歩コース。この日、拝殿まで続く長い長い石段は雪に埋もれていた……ここからの参拝で失礼します。
木の感触、風合いを楽しむ
アート体験。

ブリをモチーフにした木彫作家・瀧川千春さんの作品。富山湾の魚を題材にした作品を多く手がける。
阿良加志比古神社までの散歩の帰り道、共に木彫制作に取り組む瀧川千春さん・佐智子さんの工房『たきかわ木彫』に立ち寄りました。この地で生まれ育った瀧川さんは、富山での木彫の修業を経て、30年ほど前にUターンしました。白山市出身の佐智子さんと共にこの工房で創作活動を続け、日展のほか東京や横浜などで二人展を開催してきました。
事前に『おおのみビレッジ』に相談すれば、トレーや表札を作る木彫体験もできます。初めてでも瀧川さんが丁寧に教えてくれるから安心。木を削る心地よさに思わず夢中になってしまいます。

黙々と作品に取り組む瀧川千春さん。木を削るリズミカルな音が穏やかに響く。

木の表面全体に小さなノミ跡をつけてやわらかな風合いを出していく、根気のいる作業。多種多様な刃先の彫刻刀を使いこなす。柄の部分はすべて木を削って自作している。


繊細な印象の佐智子さんの作品。

1本の木から削り出されていることが信じられないくらい、複雑で細かな木彫が施された作品が並ぶ。
物語を紡ぐ人~スロツーびと~

「じいさんが木こりやっとったから自分も小さい頃から木が好きやった。 自然と木彫の道を選んどったわ」
たきかわ木彫:瀧川千春さん